この研究では、収容者71名に、森、山、海、川といった自然環境の3分間の映像と音声を観たり聞いたりしてもらいました。
実験の間、参加者のストレスレベルを、ストレスの変化に数分以内に反応する唾液中コルチゾールと、感情の状態に関連する皮膚の電気的特性の無意識の変化を測定するガルバニック皮膚反応の2つの方法で、終始モニターも行なっています。

その結果、バーチャル自然体験の後、参加者はストレスを感じなくなったと報告しており、コルチゾールやガルバニック皮膚反応からもストレスの低下が確認されました。
研究者は、音声より映像の方がより効果が高いだろうと予測していましたが、音声と映像とで大きな差はなく、むしろどちらを好むか、個人差による部分もありました。
参加者による評価が高かったものは「川や湖の映像」「海や砂浜の映像」「川の音」で、次いで「山の映像」でした。

この研究のさらに面白い点は、参加者に、自分が今観たり聞いたりした自然について学ぶために、生物学や生態学の講義を受けることに興味があるかを尋ねると、実験後には、自然について学ぶことに興味を持つようになったという点です。
映像や音声を見聞きするという低いコストでストレスを低減でき、かつ学びへの意欲を醸成できるということは、収容者の社会復帰を手助けする手段として使える可能性があると研究者は考えています。

Nalini M. Nadkarni, Tierney M. Thys, James S. Ruff, Allison Anholt, Jeff Treviño, and Sara K. Yeo. Ecopsychology.Jun 2021.71-83. http://doi.org/10.1089/eco.2020.0043