楽器の練習をすることが子供の脳構造を変える
低所得者層の中から、6歳の小学生を3つのグループに分け実験に参加してもらった。
- 音楽のみ練習グループ
- ロサンゼルスユースオーケストラに参加するグループ。この音楽プログラムでは1週間あたり6〜7時間楽器の練習をする。
- スポーツのみ練習グループ
- スポーツプログラム(サッカーまたはスイミング)に参加し、楽器の練習はしないグループ。サッカーは週に3回の練習と終末に試合を、スイミングは週に2回と週末に自由遊泳がある。
- 練習なしグループ
- 放課後に音楽もスポーツもしないグループ。
実験の開始前と2年後にMRIで脳構造を計測し、それぞれのグループ間で変化を比較した。
実験開始前はグループ間に脳構造の差異はなかった。一方2年後、3つのすべてのグループで、皮質の様々な領域で灰白質の厚みが減っていた。これは、他の研究報告とも一致する。
さて、その上で、音楽のみ練習グループでは以下の2点が他のグループと異なっていた。
- 右の上側頭回(superior temporal gyrus)の後方の灰白質の薄くなる量が少なかった。
- この領域は、音の特徴や音楽などの複雑な音の処理に重要であることが示されている。
- 脳梁の異方性比率(fractional anisotropy; FA)が、特に上前側頭回、感覚、運動野を接続している部分において大きい。
- 楽器を演奏するには、音を聴き手を動かすという、聴覚と運動機能を統合する必要があるために、この領域が発達したと考えられる。
音楽家の脳構造が普通の人と違うのは、後天的に鍛えたおかげかもしれない
この実験から、スポーツではなく楽器の練習をすることで、脳構造に変化が起こること、また変化する部位は音楽や楽器の演奏に関係している部位であることが示された。
すなわち音楽家の脳が普通の人と違うのは、後天的である可能性がある。
子供の脳は可塑性が高く変化しやすいというが、我々も、楽器を演奏すれば脳を鍛えられるかもしれない。