人のクリエイティビティの高い低いは何で決まるのか
創造力、クリエイティビティに優れた人がいる。その人は、特殊な脳を持っているのだろうか。
今回は、その疑問に一面でイエスと答える研究を紹介する。
その人のクリエイティビティの高い低いを予測する脳内ネットワーク
アメリカ、GreensboroのNorth Carolina大学と、その周辺から募集した被験者163名の脳活動をfMRIで計測し、人ごとのクリエイティビティの高さを予測する脳内ネットワークを特定した。
実験では、fMRIの中で発散的思考(示された物の、新しく普通でない使いみちを発想するタスク。Alternate Uses Task; AUT)をしてもらい、回答のクリエイティビティを訓練された人が1〜5点で点数をつけた。
発散的思考のクリエイティビティの点数と、その人の芸術と科学におけるクリエイティビティの成績とが強く相関した。
fMRIのデータとクリエイティビティの点数を突き合わせ、AUTに関係する機能的ネットワークを268個の領域から構築すると、クリエイティビティと正の相関をする224の機能的結合(高創造性ネットワーク)と、負の相関をする603の機能的結合(低創造性ネットワーク; 創造性が低いという意味ではなく、負の相関をするという意味で低創造性ネットワークと呼んでいる)が抽出された。
高創造性ネットワークは、主にfrontal-parietal皮質を結合している。結合のハブになっているのはデフォルトモード(例えばleft posterior cingulate cortex)、サリエンス(例えばleft anterior insula)、frontoparietal/executive(例えばright dorsolateral prefrontal cortex)ネットワークである。低創造性ネットワークは脳全体に広がっており、主にsubcortical/brainstem領域(例えばleft thalamus)、デフォルトモードネットワーク(例えばleft posterior cingulate cortex)、小脳に分布している。
ここで求めたクリエイティビティの脳内ネットワークは、本当にクリエイティビティの高い低いを表す汎用的なものか
高創造性ネットワーク、低創造性ネットワークはアメリカの被験者の脳活動データから構築した。
この研究では、次に、オーストリア人の被験者39名の脳活動を計測し、モデルを当てはめ、オーストリア人のクリエイティビティを予測できるかどうか検証した。
被験者39名は、fMRIの中で発散的思考(60秒間、示された物の創造的な使い方を思いつくタスク)を行い、そのクリエイティビティを発想の流暢さと独創性で評価した。
アメリカ人のfMRIデータで作った高創造性ネットワーク、低創造性ネットワークを、オーストリア人のfMRIのデータにあてはめて創造性を予測すると、高創造性ネットワークは創造性の予測が有意に相関し(オーストリア人のfMRIデータで、高創造性ネットワーク内の活動が高い人は創造性の点数が高かった)、低創造性ネットワークは有意ではなかった。
ここで求めたクリエイティビティの脳内ネットワークは、クリエイティビティだけを予測するか
更に、この脳内ネットワークは、クリエイティビティだけに関係し、それ以外には関係しないかどうか、検証を行った。
先程の39名とは別の、オーストリア人の被験者54名に実験を行った。
被験者はfMRIに入り、2つのタスクを行った。
- 発散的思考をしてもらうタスク
- 示された単語の形容詞を思いつくタスク
1.の実験で得られたfMRIデータに、クリエイティビティの脳内ネットワークモデルを当てはめると、高創造性ネットワークは創造性の予測が有意に相関し、低創造性ネットワークは有意ではなかった。
2.の実験で得られたfMRIデータに、クリエイティビティの脳内ネットワークモデルを当てはめると、高創造性ネットワーク、低創造性ネットワークの結合の強さは、どちらも関係しなかった。
この2つのことから、高創造性ネットワークが、創造性に関わっていると考えられる。
クリエイティビティの高さは、その人の脳内ネットワーク結合で予測できる
これまでの実験では、創造力を働かせているときの脳活動を計測するときに、発散的思考をしてもらっていた。
実は、発散的思考をせず、何もしていないときの脳内結合を計測するだけで、その人のクリエイティビティの高さが予測できる。
まず、中国人の被験者405名に、MRIに入らず発散的思考タスクを行ってもらい、個々人のクリエイティビティを計測した。
また、fMRIを使って安息時(なにもせずじっとしている)の脳活動を計測した。
安息時の高創造性ネットワークおよび低創造性ネットワークの機能的結合の強さと、本人のクリエイティビティの高さに有意に高い相関があった。(ただし、低創造性ネットワークとクリエイティビティの高さに「正」の相関があったのは予想外)
このモデルが創造性のみに関係するかどうかを検証するため、流動性知性も計測し、そのスコアとの相関を計算したが、高創造性ネットワークと低創造性ネットワークのどちらも相関は低かった。
人のクリエイティビティの高い低いは、脳内ネットワーク結合で予測できる
創造力、クリエイティビティに優れた人は、ここで示されたデフォルトモード、サリエンス、frontoparietal/executiveネットワークにおける結合が強いのかもしれない。
自分が創造力が低いと言ってあきらめてはならない。
逆に、この脳内ネットワークを強めるよう訓練をすることで、新しいアイデアがどんどん生まれるようになるかもしれないのだから。
人のクリエイティビティの高い低いは何で決まるのか
創造力、クリエイティビティに優れた人がいる。その人は、特殊な脳を持っているのだろうか。
今回は、その疑問に一面でイエスと答える研究を紹介する。
その人のクリエイティビティの高い低いを予測する脳内ネットワーク
アメリカ、GreensboroのNorth Carolina大学と、その周辺から募集した被験者163名の脳活動をfMRIで計測し、人ごとのクリエイティビティの高さを予測する脳内ネットワークを特定した。
実験では、fMRIの中で発散的思考(示された物の、新しく普通でない使いみちを発想するタスク。Alternate Uses Task; AUT)をしてもらい、回答のクリエイティビティを訓練された人が1〜5点で点数をつけた。
発散的思考のクリエイティビティの点数と、その人の芸術と科学におけるクリエイティビティの成績とが強く相関した。
fMRIのデータとクリエイティビティの点数を突き合わせ、AUTに関係する機能的ネットワークを268個の領域から構築すると、クリエイティビティと正の相関をする224の機能的結合(高創造性ネットワーク)と、負の相関をする603の機能的結合(低創造性ネットワーク; 創造性が低いという意味ではなく、負の相関をするという意味で低創造性ネットワークと呼んでいる)が抽出された。
高創造性ネットワークは、主にfrontal-parietal皮質を結合している。結合のハブになっているのはデフォルトモード(例えばleft posterior cingulate cortex)、サリエンス(例えばleft anterior insula)、frontoparietal/executive(例えばright dorsolateral prefrontal cortex)ネットワークである。低創造性ネットワークは脳全体に広がっており、主にsubcortical/brainstem領域(例えばleft thalamus)、デフォルトモードネットワーク(例えばleft posterior cingulate cortex)、小脳に分布している。
ここで求めたクリエイティビティの脳内ネットワークは、本当にクリエイティビティの高い低いを表す汎用的なものか
高創造性ネットワーク、低創造性ネットワークはアメリカの被験者の脳活動データから構築した。
この研究では、次に、オーストリア人の被験者39名の脳活動を計測し、モデルを当てはめ、オーストリア人のクリエイティビティを予測できるかどうか検証した。
被験者39名は、fMRIの中で発散的思考(60秒間、示された物の創造的な使い方を思いつくタスク)を行い、そのクリエイティビティを発想の流暢さと独創性で評価した。
アメリカ人のfMRIデータで作った高創造性ネットワーク、低創造性ネットワークを、オーストリア人のfMRIのデータにあてはめて創造性を予測すると、高創造性ネットワークは創造性の予測が有意に相関し(オーストリア人のfMRIデータで、高創造性ネットワーク内の活動が高い人は創造性の点数が高かった)、低創造性ネットワークは有意ではなかった。
ここで求めたクリエイティビティの脳内ネットワークは、クリエイティビティだけを予測するか
更に、この脳内ネットワークは、クリエイティビティだけに関係し、それ以外には関係しないかどうか、検証を行った。
先程の39名とは別の、オーストリア人の被験者54名に実験を行った。
被験者はfMRIに入り、2つのタスクを行った。
- 発散的思考をしてもらうタスク
- 示された単語の形容詞を思いつくタスク
1.の実験で得られたfMRIデータに、クリエイティビティの脳内ネットワークモデルを当てはめると、高創造性ネットワークは創造性の予測が有意に相関し、低創造性ネットワークは有意ではなかった。
2.の実験で得られたfMRIデータに、クリエイティビティの脳内ネットワークモデルを当てはめると、高創造性ネットワーク、低創造性ネットワークの結合の強さは、どちらも関係しなかった。
この2つのことから、高創造性ネットワークが、創造性に関わっていると考えられる。
クリエイティビティの高さは、その人の脳内ネットワーク結合で予測できる
これまでの実験では、創造力を働かせているときの脳活動を計測するときに、発散的思考をしてもらっていた。
実は、発散的思考をせず、何もしていないときの脳内結合を計測するだけで、その人のクリエイティビティの高さが予測できる。
まず、中国人の被験者405名に、MRIに入らず発散的思考タスクを行ってもらい、個々人のクリエイティビティを計測した。
また、fMRIを使って安息時(なにもせずじっとしている)の脳活動を計測した。
安息時の高創造性ネットワークおよび低創造性ネットワークの機能的結合の強さと、本人のクリエイティビティの高さに有意に高い相関があった。(ただし、低創造性ネットワークとクリエイティビティの高さに「正」の相関があったのは予想外)
このモデルが創造性のみに関係するかどうかを検証するため、流動性知性も計測し、そのスコアとの相関を計算したが、高創造性ネットワークと低創造性ネットワークのどちらも相関は低かった。
人のクリエイティビティの高い低いは、脳内ネットワーク結合で予測できる
創造力、クリエイティビティに優れた人は、ここで示されたデフォルトモード、サリエンス、frontoparietal/executiveネットワークにおける結合が強いのかもしれない。
自分が創造力が低いと言ってあきらめてはならない。
逆に、この脳内ネットワークを強めるよう訓練をすることで、新しいアイデアがどんどん生まれるようになるかもしれないのだから。