May 28, 2024

難聴はアルツハイマー病を促進する(nature aging)

Hearing loss promotes Alzheimer’s disease というnature agingの論文ニュースから。元論文(GDF1 ameliorates cognitive impairment induced by hearing loss)も同じくnature agingに掲載されいています。

(画像:https://doi.org/10.1038/s43587-024-00606-2)

これまで議論されてきたこと

難聴が認知症の最大リスク要因であることは、The Lancetの研究論文にもあるように、広く知られるようになってきた事実です。

しかし、なぜ認知症リスクを高めるのかは、「難聴によって認知機能への刺激が減る」もしくは「聴覚に認知リソースを奪われてしまい、他の機能が使われなくなる」など、様々な仮説があります。

今回の研究では、難聴自体が分子プロセスを通じて、直接的に認知症のリスクを高めていることを明らかにしています。

難聴がアルツハイマー病を促進するメカニズムについて分かったこと

難聴によってアルツハイマー病が促進されるメカニズムについて、明らかになったことは以下の通りです。聴覚喪失を起点として、時系列順に並んでいます。

ちなみに今回の実験ではマウスを用い、蝸牛切除 Cochlear Ablationとカナマイシン投与によって、聴覚喪失を誘発しています(それぞれ別個に行っている)。

  • 聴覚喪失によってGDF1が減少

    • 聴覚喪失が海馬でのGDF1(成長/分化因子1)の発現減少を引き起こす

  • GDF1の減少が、AKTシグナリング経路の活性を低下

    • GDF1の発現低下は、AKTシグナリング経路の活性を低下させ、AKTのリン酸化も抑制。これにより、AKT経路は全体的に抑制される

  • AEP活性の増加

    • AKTの活性低下は、AEP(アスパラギンエンドペプチダーゼ)活性を増加させる

    • AEPはAPP(アミロイドβ前駆体タンパク質)を切断し、アミロイドβの産出を促進する酵素

  • アルツハイマーの病理の促進

    • AEPが増加することで、(APPが切断されることにより)APPからアミロイドβが多く作られ蓄積し、プラークを形成。神経細胞の損傷、そして認知機能の低下を引き起こす