自閉症の子供が音楽の練習をすることによる社会的コミュニケーションと脳機能の機能的結合の変化を調査した研究
この研究では、6〜12歳の自閉症の子供51名をランダムに音楽練習群(26名)と練習しない群(25名)に割り当てて実験している。
- 音楽の練習群では、楽器、歌、リズムを通した即興的なアプローチで練習をした。この練習は、社会的コミュニケーションと会話の交代の仕方の向上、感覚運動の統合を目的としたものである。
- 練習しない群では、構造的には音楽の練習群と同じ行動トレーニングを、音楽を使わないやり方で行った。
それぞれの群は、8〜12週間の練習を行った。
音楽の練習により社会的コミュニケーション能力は向上したか?
実験の前と後とで、以下の変化を計測した。
- 実際的なコミュニケーション能力を測定するCCC-2
- 自閉症の度合いを測定するSRS-II
- 理解可能な語彙を計測するPPVT-4
- 家族による評価を計測するFQoL
- 行動を評価するVABSのうちの不適切な行動
音楽の練習群において、練習後にCCC-2で計測したコミュニケーションの成績と、家族によるFQoLの評価が有意に高まった。
音楽の練習による社会的コミュニケーション能力の向上は、脳の変化と関係しているのか?
実験の前と後とで、fMRIを用いた安息時の前頭葉と側頭葉との機能的結合も計測しており、コミュニケーションの成績との関係性が分析された。
- 音楽を練習した群は、しなかった群と比較し、安息時の機能的結合が聴覚野とstriatumとの間、および聴覚野と運動野との間で強まっていた。
- 音楽を練習した群では聴覚野と視覚野との結合が低くなっていた。自閉症ではこの結合が過度に強まっていることが知られている。
脳活動の変化とコミュニケーション能力の関係性を分析すると、下記の2点が分かった。
- 左のHeschl’s gyrusと、視床およびstriatumとの機能的結合の強さと、CCC-2の成績の向上度合いが相関していた。
- 右のHeschl’s gyrusと視覚野の機能的結合の強さと、CCC-2の成績の向上度合いが逆相関していた。
音楽の練習をすることが自閉症治療の一手段になるかもしれない
この研究では、8〜12週間の音楽の練習をすることで、機能的結合を変化させ、それが社会的コミュニケーションの改善につながる可能性を初めて示した。
このような調査が進められることで、自閉症の子供や家族の支援につながることを期待する。
References
Megha Sharda et al., Music improves social communication and auditory–motor connectivity in children with autism. Translational Psychiatryvolume 8, Article number: 231 (2018)