David Blodgett The Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory

Davidは、MIT Technology ReviewのFuture Computeイベントで自身の研究の目的や現状を発表した。
Davidは光学技術を使ったリモートセンシングの研究者であり、開発している技術はホログラフィックイメージング、あるいはcoherentイメージングをもとにしたものである。
この技術では、coherent光を計測したい対象物に照射し、拡散した光をレンズでとらえ、レンズでフーリエ変換をして処理することで計測対象の像を形成する。
この方法により、対象物の動きの情報を、光の波長の1/1,000の単位(例えば数ナノメートル)で、かつ高い時間分解能でとらえることが可能になる。

神経細胞が活動するとき、イオンが移動することで電位が発生する。イオンの流れは同時に神経細胞の形や位置の変化ももたらす。その動きを計測することで、神経活動を計測することができるという考えである。
生きたげっ歯類のひげを刺激したときの、体性感覚野の神経細胞の活動を電気的、および開発中の光学的手法の両方で計測すると、光による計測では、電気計測と同じ時間変化パターン、同じ周波数帯で信号変化を観測できた。時間分解能は電気計測と同じ、空間分解能はmm以下で、既存の非侵襲的な脳機能計測技術の限界を超える。

次は、同じことが頭蓋骨を通してできるかどうか、ヒトへのトライアルを2020年内に予定している。

関連論文は、Facebookと行っていたこと以上の内容が盛り込まれ、2020年の4月に公開される予定。

関連記事:次世代非侵襲Brain Machine Interface への6つの道

昏睡状態を電気刺激で目覚めさせることができるかもしれない

University of Wisconsin Madisonによる研究で、視床外側中心核への電気刺激により、無意識のサル(マカク)を目覚めさせることに成功した。
まず、マカクの脳に電極を挿入し、複数の脳領域から神経活動を記録し、覚醒・睡眠・麻酔の各状態と照らし合わせ、意識に関係している領域を特定した。
次に、麻酔したマカクに、脳深部刺激療法(deep brain stimulation)を用いてその領域に電流を流した。この領域への電気刺激は、昏睡状態の患者に対して試されているが、成功した例は数えるほどしかない。

今回の研究では、刺激部位を精緻に決めるために非常に小さく、視床外側中心核の形にフィットする電極を用いたのがこれまでの研究との違いである。
麻酔薬を継続的に投与しているにも関わらず、刺激を開始してから2秒以内にマカクが目を開き、部屋の中を見回し、体を動かし、目的を持った動作を始め、電気刺激を止めると数秒以内に無意識状態に戻った。

今回の研究が過去の研究と違うもう1つの重要な違いは、脳深部刺激では通常1秒間に100回の電気パルスを使うのに対し、この研究では1秒間に50回としたことである。これは、視床外側中心核の活動を模倣しようとして考えられた値である。