瞑想はよい効果があると言われているが、実際どのような効果があるのだろうか。

今回は、物事の学び方が変わるという点に着目した研究をご紹介する。

瞑想の熟練者と、瞑想をしたことがない人を実験対象にした

この研究では、

  • 瞑想をしたことがない群(12名)
  • 瞑想初心者群(12名)
  • 瞑想の経験を積んだ群(11名)

の35名の被験者を対象に実験した。
経験を積んでいるかどうかは、少なくとも4年間、1週間に30分以上瞑想をしているかどうかで判断した。

被験者は、なるべく多く報酬をもらえるように試行錯誤しながら学習するタスクを行った

画面上に2つのひらがなが表示され、被験者はそのどちらかを選ぶ。
(この実験はイギリスで行われており、ひらがなは意味のない画像として使われている。)
ここでは日本人に向けて、ひらがなではなくA, B, C, D, E, Fで表現し、画面上にAとB, CとD, EとFのペアで表示されるとする(アルファベットを、単体では意味のない記号の例だとみなす)。
AとBが表示されているとき、もし被験者がAを選ぶと80%の確率で、Bを選ぶと20%の確率で報酬(+10ポイント)が得られる。逆に、Aは20%の確率で、Bは80%の確率でポイントが10点引かれる。
CとDのペアでは、Cを選ぶと70%の確率で、Dを選ぶと30%の確率で報酬が得られ、EとFの場合はEが60%、Fが40%である。
被験者がパターンを学習したと考えられるしきい値を上回るまで、これを試行錯誤しながら繰り返す。

次に、AとC, BとDのように、これまでに出てきていない新しい組み合わせを見せ、同様にどちらかの文字を選んでもらう。
ただし、今回は報酬は得られない。
これまで正しく学習していれば、Aが最も報酬が得られ、Bは最も罰が大きいので、どういう組み合わせにせよAを選び、Bを避ける行動を取ると予想される。

瞑想の経験により学習にどのような違いが見られるか

Aを選ぶべきときの成績から、Bを避けるべきときの成績を引き算した値を、それぞれの群ごとに評価した。
この値が負のときはB(罰)を避ける行動が強化され、正のときはA(報酬)を得る行動が強化されているといえる。
瞑想をしたことがない群ではこの値が-0.11、瞑想初心者群では0.00、瞑想の経験者群では0.05であり、瞑想の経験者ほど報酬を得ることから学ぶといえる。

瞑想の経験者と瞑想をしていない人にはどのような脳活動の違いがあるか

タスクを行っているときに、脳波計を用いて脳波も同時に計測した。
+10/-10ポイントのフィードバックを行った時刻を0秒として、FCzの位置で事象関連電位(ERP)を算出した。
ERPは、選ぶべきひらがなを選んだか否か、および+10/-10のポイントの組み合わせ4種類ごとに算出した。
このERPを用いて、間違ったひらがなを選んで-10ポイントのときのERPから、正しいひらがなを選び+10ポイントを獲得したときのERPを引き算したfeedback-related negativity(FRN)を計算した。

瞑想を行うことで、辺縁系のドパミン系およびそこから投射しているanterior cintulate cortex(ACC)やstriatumを活性化したり可塑性を変化させることが分かっている。
このドパミン作動性の活動が、FRNが発生する神経メカニズムの一つであると広く受け入れられている。
FRNの振幅を比較すると、瞑想をしていない群では振幅が最も大きく、次に瞑想初心者群、瞑想経験者群が最も小さかった。

瞑想はより客観的に出来事を評価して学べるようになるかもしれない

瞑想経験者のFRNの振幅が小さかったということは、瞑想をしたことがない人と比べ、報酬を得たときと罰を得たときの脳活動に大きな差がなかったということである。
そのため、瞑想をすることは、ポジティブなフィードバックもネガティブなフィードバックも均等に評価し、よりよい学習と判断ができるようになることにつながるかもしれない。
ただし、(この種の検討によくあることだが)効果量が劇的に変わっているわけではない。科学的には、さらなる検討が望まれるといえよう。

References:
Knytl, P. & Opitz, B. Cogn Affect Behav Neurosci (2018). https://doi.org/10.3758/s13415-018-00665-0